[blog]アナログゲームの設計で気を付けていること
10/16/2015 Tanaka Kazuhiro Comments Closedアナログゲームのアイデアを考えていて気をつけている事に、「簡単に遊べるか」というものがある。
先に要約すれば「ルールが簡単か」という事だが、それを少し掘り下げてみる。
◆ゲーム進行は簡単か
コンピューターゲームとは違い、アナログゲームではゲーム進行をプレイヤー達自身が行う。
そのため、プレイヤーが理解できない複雑なルールや、計算できない複雑な判定は作るべきではない。
例えば、有名なボードゲーム「人生ゲーム」のゲーム進行は次のようなものだ。
プレイヤーは順番に次のアクションを行う
1. ルーレットを回す
2. 出目の数だけコマを進める
3. 止まったマスの内容を実行する(お金の増減など)
実際にはもう少しあるが、基本の流れはこれだけだ。
典型的な双六の遊び方で覚えるのも難しくない。
一方、現代ボードゲームに多大な影響を与えたと言われる「カタン」というゲームがあるが、ゲーム進行は次の通りだ。
プレイヤーは順番に次のアクションを行う
1. サイコロを振る
先に発展カードを使う事もできる
2. 出た目に応じて資源を得る
出目が「7」の場合、盗賊を動かして他プレイヤーから資源カードを奪う
3. 各種アクションを可能なだけ行う
「交渉」「貿易」「建設」「発展カードの使用」
人生ゲームに比べて随分と複雑だ。
特に3番では複数の行動を自由に行えるため高度な判断力を要するし、「交渉」は他のプレイヤーと資源の交換を話し合うもので、互いの利害を見極める分析力が求められる。
簡単な方が常に正しいという訳ではないが、可能な限り簡単にするのは大切なことだ。
進行が簡単だとゲームのテンポも良いし、プレイしていて楽しい。
※複雑なゲームの例としてカタンを挙げたが、カタンが特別に遊び辛いゲームというわけではない。カタンは、その自由度の高さによって幾つもの勝利方法が存在し、また、交渉によって競争相手と一時的な協力関係ができたりと、非常に奥深いゲームとなっている。是非プレイしてほしい。
◆計算は簡単か
アナログゲームでは、ゲーム中に行われる各種計算もプレイヤー達で行う。
電卓を使えば正確な計算は可能だが、わざわざ電卓が必要になるような、複雑な計算を必要とする設計にするべきではない。
殆どのゲームでは、ゲーム中に用いる数値を2桁以内に収めている。
3桁用いているゲームもあるが数は少ない。
そしてゲーム中に行う計算式も、次に挙げる簡単なものに限られる場合がほとんどだ。
計算の種類 例 2桁以内 + 2桁以内 1 + 4
12 + 5
36 + 292桁以内 – 2桁以内 8 – 3
47 – 9
54 – 262桁以内 × 1桁 4× 7
36 × 52桁以内 ÷ 1桁 6 ÷ 2
48 ÷ 4
これら式の組み合わせ(A×B+Cなど)でほぼ全ての計算を行う。
また乗算や除算が使われることは少なく、加減算を使うことの方が多い。
◆勝敗の確認は簡単か
「状況の確認は簡単か」とも言える。
カードゲームをはじめ多くのボードゲームでは「一定の勝利点を最速で獲得したプレイヤーの勝ち」、あるいは「ゲーム終了時に勝利点を最も多く獲得したプレイヤーの勝ち」というルールを採用している。
そのため、点数計算はゲームの最後だけではなく途中でも頻繁に行われるが、その度に複雑な手続きや計算が必要なのは好ましくない。
また、勝敗の確認方法が複雑だと間違える危険もある。勝敗判定を間違えるのはゲームにとっては深刻な事態だ。
そのため、勝敗の確認は簡単なことが求められる。
・勝利点カードに書かれている数の合計
・勝利条件のコマの配置数
この程度ならそれほど難しいものではないし、さらに可能なら一目で判るのが理想だ。
一方、ルールの設計によっては勝敗の状況が判らない、判り難くなっているものもある。例えば「人狼」はゲーム終了の瞬間に判る。
そういったゲームの場合は今回のケースには含まれない。
◆ゲームの準備は簡単か
ゲームを考えている中で、意外な落とし穴なのがこれだ。
例として、以前に思案していたゲームでは次のような準備が必要だった。
1. 得点カード(ABCの3種類)を種類毎にシャッフルしてテーブルに置く
2. 得点カードAを4枚、Bを3枚、Cを2枚開く
3. 特殊スキルカードをシャッフルしてテーブルに置く
4. リソースカードをシャッフル
5. リソースカードをプレイヤー4人に5枚ずつ配る(手札)
6. 残りのリソースカードは山札として置く
7. ジャンケンで順番を決める
8. ゲームスタート
準備の中で「得点カードABC」「特殊スキルカード」「リソースカード」と、カードの山が5種類も出てきて、それぞれをシャッフルしてテーブルに並べたりプレイヤーに配ったりしている。
さらに、これらカードは全部で140枚ほどあって中々のボリュームだ。一般的なトランプ(ジョーカー無しで52枚)の約2.7倍もある。
ゲーム内容にもよるが、「シャッフルする山3つまで」「配るのは2種類まで」というのが一つの目安ではなかろうか。これを越えると準備が面倒に感じることが増える。
◆まとめ
ゲームの内容をあれこれ考えるあまり要素を増やしてしまいがちだが、その一方で、そのゲームの骨子を損なわず要素を減らすこと、単純化することはとても難しい。
例えばカードゲームを考えている中で、カードの種類や枚数はそのゲームの設計に適切な数か、カードの属性の種類は多過ぎないか、常に考えなければならない。
それでもルールが簡単であれば遊びのハードルを低くし、小さな子供やゲームに馴染みのない人々でも遊ぶことができる。
より多くの人々にゲームに接してもらうためにも、努力を怠ってはならないだろう。